自動運転の主戦場はプロダクトではない

グーグル、自動運転車で日本勢と連携 「自前の工場持たず」

この記事は、日本の完成車メーカーや部品メーカーにとってグーグル(正確にはグーグルXか)は脅威じゃないですよ、むしろパートナーですよ、ということを広報したいがために書かれたものであろうことは、次の一節を見れば明らか。
「よく誤解されるが、我々がメーカーになって車の販売台数を増やすことが目標ではない」と述べ、既存の自動車メーカーとは競合関係にないことを強調。グーグルはセンサーやソフトウエアなどの開発に専念し、最終的な自動運転車の販売・普及の段階では自動車メーカーと組むとの方針を示し、一部の自動車メーカーが懸念する「グーグル脅威論」を否定した。
でも僕なんかは、このスキームの方が脅威だと思う。もしグーグルXが自前で車体や動力を用意するなら、既存の完成車メーカーは、走行安定性とか居住性とか、これまで「クルマづくり」をしてきた経験を生かしてプロダクトレベルで差別化ができる。しかしグーグルXが手がけるのは狭義には自動運転制御ソフトウェアであり、広義にはクルマというプロダクトを超えた「自動運転車がもたらす社会」のグランドデザインであって、それこそが自動運転車に関する議論の主戦場であろうと思う。

個人的には、かつて名馬を繰ることが将たる人の誇りであったように、クルマには人の「操る歓び」を満たす何かがあると思う。自由に移動することの楽しさは、「自由に操れる」アイテムによって倍加する。自動運転はトラックやタクシーに留め、自家用車には交通事故を遠ざけ「自由な移動の歓び」をより高めるためにテクノロジーが使われる。そういうグランドデザインが、既存の完成車メーカーから出てきて欲しい。