藤井と江尻


同い年の藤井と江尻が揃ってトライアウトを受けた。この二人の縁は交わっているようですれ違っていて、おもしろい。

高校時代は伊予の怪腕と進学校のイケメンエース。1年夏からプロ注目の存在でAAA日本代表にも選ばれた藤井に対し、江尻は中央球界では目立った存在ではなかったはずだ。二人の接点もなかっただろう。大学で同じ早稲田に進んだが、江尻が2年浪人したため一緒だったのは2年間だけ。微妙な「ズレ」が仕込まれたのはここからだ。
プロは藤井が当初ヤクルト、江尻が日ハムとリーグも場所も離れたものの、藤井がトレードで日ハムに来て再びチームメートに。ところが藤井は2シーズン在籍しただけでFAで巨人に行き別々に。
その後江尻がトレードで同じセリーグの横浜へ。すると数年後に藤井がFAの人的補償で横浜に来てまたチームメートに。しかし今度は江尻がソフトバンクにトレードされ僅か1シーズンで別々に。そして今年、同じタイミングで戦力外を言い渡され、トライアウトのグラウンドで再び邂逅したわけだ。

トレードは本人達の意思ではないだろうが、それにしてもくっついたり離れたり忙しい。この二人に、早稲田でちょうど学年的に挟まれていた鎌田(元ヤクルト 最後は台湾で大活躍した)を交えた3人の野球人生を追いかけたら、短編小説でも出来てしまいそうだ。

トライアウトで、二人はどんな言葉を交わしたんだろうか。